君が嫌いな君が好き
「勝手にできないって決めつけないでくれる?」

彼が唇を動かして、音を発した。

「確かにあんたの言う通り、女に苦労したことはないよ?

でも寄ってくる女を抱くかどうかは俺が決めることなんだけど」

言い終わった彼の顔が近づいてきた。

「――ッ…」

近づいてくる端正なその顔立ちを見つめていたら、唇が触れた。

いきなりの出来事に、状況を理解することができない。

もしかしなくても…私、彼にキスされたの?

そんなことを思っていたら、彼の唇が私から離れた。

「あんたが望むんだったら今すぐにでも抱いてやるよ。

売られたケンカを買うならぬ、売られた言葉を買う…って言うところかな」

そう言った彼は、口角をあげて笑った。
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