秘密の交換をしよう


そんな彼女に言ってしまった。



「姫鈴ちゃんが卒業したら、呼び戻してもいいから」



当然、咄嗟に出た嘘だった。



でも彼女は、俺が言ったように俺を呼び戻した。


自分の親の会社に。



でも、呼び戻されてよかった。


だって、そこで凛ちゃんに出会えたから。



俺に媚び売ってこない女、久々に見た。


それに、俺に興味ないのかと思ったら、女から助けようとしてくれるし。



でもそれは自分のためだとか言い張ってて。



なんか……


可愛いって思ったんだ。



俺は、絶対に恋愛しないって思ってた。


てか、俺が誰かを愛せるはずないって思ってた。


愛を知らないし。



なのに、凛ちゃんから目が離せなくなって。


凛ちゃんのそばにいて、守りたいって思い始めて。



あー、俺でも人を好きになれるんだって。



凛ちゃんがどうして恋愛に興味がないのかわからないけど、それでも俺は、凛ちゃんに好きだって言い続ける。



それは俺が今までずっと誰かに言ってほしかった言葉で、誰かに言われると嬉しいことを知ってるから。

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