秘密の交換をしよう


結木さんの涙はもう流れていない。


そればかりか、笑顔だ。



もちろん、つくりものじゃない。


……と、願うけど。



「とぼけないでくださいよ! 私、本当に恋愛に興味ないですからね。はやいうちに諦めてください」


「そう言われたら、諦められないなあ。まずはさ、結木さんじゃなくて、別の呼び方にしてよ」



……わがまま発動?


それとも、これが結木さんなりの甘え方?



多分、後者が正解なんだろうな……



「だったら……遥真さん?」


「やだ。よそよそしい」



これは確実に、ただのわがままだ。



「そう言うんだったら、自分で決めてください」


「んー……あ、ハルとかどう?」



なにを言ってるんでしょう、この上司は。


どう?じゃないよ……



上司をそんなふうに呼べるわけがない。



「出来なかったら、凛ちゃんの仕事、全部上村さんに任せよっかな」

< 68 / 188 >

この作品をシェア

pagetop