秘密の交換をしよう
結木さんの涙はもう流れていない。
そればかりか、笑顔だ。
もちろん、つくりものじゃない。
……と、願うけど。
「とぼけないでくださいよ! 私、本当に恋愛に興味ないですからね。はやいうちに諦めてください」
「そう言われたら、諦められないなあ。まずはさ、結木さんじゃなくて、別の呼び方にしてよ」
……わがまま発動?
それとも、これが結木さんなりの甘え方?
多分、後者が正解なんだろうな……
「だったら……遥真さん?」
「やだ。よそよそしい」
これは確実に、ただのわがままだ。
「そう言うんだったら、自分で決めてください」
「んー……あ、ハルとかどう?」
なにを言ってるんでしょう、この上司は。
どう?じゃないよ……
上司をそんなふうに呼べるわけがない。
「出来なかったら、凛ちゃんの仕事、全部上村さんに任せよっかな」