17のとしに
「まあな」
兄は急にごめんと泣きそうな笑顔を作って去っていった。こんな会話も慰めが必要な人間を見ることも慣れてきてはいるけど。多分、この後兄は風呂に入ったのだろうと部屋の中で推測する。シャワー浴びながら泣くとか青春、思春期じみたことも好きにしてくれ、と思っている。
 俺自身、自身をまず救えていないのだから誰も彼も救うなんてことはできないのだ。兄は兄で何とかやって欲しい。年が近くても兄なんだから。
 
 兄はどう思っていたのか知らないが、俺の予想通り誰かと食卓を囲むことはなかった。兄の部屋から漏れるあかりを部屋から出た際に確認した程度だ。俺も兄もそこまで家族と一緒の時間を過ごすということに執着がないのかもしれない。兄はそうでなくても俺はそう思っている。
 夜9時を過ぎた頃に母親が、その30分後に父親が帰ってきた。今日は早かったらしい。兄は一階から物音がするなりドタバタと両親の元へ向かった。ああ、帰ってきたなぁなんてことを考え布団に潜ろうかと電気を消したところで風呂にも歯を磨いていないことにも気がついた。
「あ、めんどくさいなぁ」
しかし日々のこれらは日々の日課。電気をつけなおし、だるい体を引きずりながら風呂場へ向かう。
 リビングでは兄と父親がなにやら話していた。若干、激しそうにとげとげしい声だった。じく、と心臓にいやな汗が流れる。慌てて俺は風呂場に閉じこもった。


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