17のとしに

「崩れる」

 崩れてしまいそうだ、多分。多分そうなんだ。
 ある秋の夜。夕飯の片付けをしている時だった。誰もいなくなった台所で黙々と皿洗いしてる時、食事をしていたテーブルに置いていた携帯からテレンという大きな音がした。ロスか学校の友人からかと思い軽い気持ちで通知内容を確認した。
「つらい状態」
誠也から、一言。メッセージが来ていた。緊迫した状態だなと勝手に感じながらも私は「どうしたの、大丈夫?」とありふれた返信内容で送った。珍しくすぐに
「最低なことしちゃった、死ねって言っちゃった」
「誰に言ったの」
「母親に」
誠也から母親という言葉がでることがあまり無かったために私自身も少し動揺した。唾を飲んで、一息おいて返信する。
「話聞くよ?くわしく話してごらんよ」
皿を急いで洗って、若干雑に食器棚に収納する。誠也がこんなに緊迫した雰囲気のメッセージを送ってくるのは高校1年生以来だなぁなんても思っていた。

 翌朝。気づいたら誠也はいつものスローペース返信に戻っていた。元に戻れたんだろう。安心しつつ、私は普段通りに起床し自宅を出た。今日は少し雨模様らしい。透明の500円の傘をぶらぶら持ちながら登校しきった。登校時間終了まで20分程度。教室にはもうロスやクラスメイトが大方そろっていた。ロスも普段通り眠そうに寝癖をたてながら、目をこすっている。
「ロス、おはよ」
とりあえず昨日の誠也のことを話すべく、ロスの席へ立ち寄った。
「ん、リトおはよう」
かなり眠そうな声だ。夜更かしでもしていたんだろうかとそこを突っ込みたくなるがきゅっと我慢する。
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