赤いサヨナラは僕に似合わない
僕のせいで君のせいじゃない


きみは僕を変えられないし、僕にきみを変えられるほどの技量はない。


そんなこともう心の中で随分と前からわかっていたし、僕なりに君を大事にする努力だってしているつもりだった。

ずっと続くなんてそんなことはないって、心の何処かではちゃんとわかっていたつもりだったけど、本当に離ればなれになるとも思っていなかったのかもしれない。


だからきっとこんなにも哀しいんだろう。


君がいなくなったからじゃない。僕自身がとても情けなくて涙がでる。君のせいじゃない。

最後まで君に心を揺さぶられていたなんて事実は無根にしてしまいたいから、この涙は自分自身に向けてだと言っておく。誰に向けての言い訳なのかわからないけれど、そういうことにしておく。


朝、昨日当たり前のように僕のとなりで眠りについた君の姿はなかった。

代わりに残されていた「サヨナラ」の文字と、僕が1年前に君にあげた僕の部屋を開ける愛のカタチを見て、僕はいろんなことが終わったんだな、と思った。


僕の首筋に残る真っ赤な痕が、君の意地悪さを物語っているみたいだな。サヨナラを言うつもりだったのなら、どうして君は昨日僕の部屋に来たんだろう。

どうして僕の首に腕を回したりなんかしたんだろう。どうして僕の首筋に唇を這わせたんだろう。どうして、あんなにも切なそうに僕の名前を呼んだんだろう。


なあ、どうして、僕の心も、持って行ってくれなかったんだよ。



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