癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
「失礼します。」

私が座ると、半井さんが気を利かせて、
緑茶をもってきてくれた。

「このビルはね、ただの商業ビルじゃなくて、
ホテルも入っているだろう。
だから、管理スタッフは宿直があるんだ。」

私が宿直室を不思議に思っていると察したのか、
お父様は説明してくださった。

「私はね、悟にも幸せな家庭を築いてもらいたいと思っているんだ。
女性不信だった悟が君と出会って、変わった。
表情が持てるようになった。本当に君には感謝しているよ。
私が管理スタッフに扮装したのは、
君がどんな女性か知りたかったからだ。
最初から悟の父と名乗っていたら、警戒しただろう?」

「はい。」

「君の評判はとてもいい。
親としては君のような人に悟を支えてもらいたい。
悟のこれまでのことは何か聞いているのかい?」

「女性不信だったことについてはお聞きしています。
それ以外は、まだお付き合いをはじめたばかりで、
私はなんとお答えしていいかわからないのですが…。」

「じゃあ、あいつがB.Cコンピュータの
社長になった経緯は知っている?」

「悟さんとは、B.Cコンピュータ関係の翻訳の仕事で
知り合いました。彼が社長であることはもちろん知っています。
ただ、どうして社長になったかまでは
まだ彼の口から聞いたことはありません。」

< 68 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop