癒しの田中さんとカフェのまみちゃん

「俺、先輩に頭上がんないんだよ。
高校、無事卒業できたのは先輩のおかげなんだ。
俺、理系科目苦手でさ。
先輩とはサッカー部で一緒だったんだけど、
理系科目の面倒見てもらっていたんだ。
それにこのカフェの日本1号店をどこにつくるかってときに、
B.C.　Building　Inc.に口利きしてくれたのも先輩なんだ。」

「そうなんですか。マスターにとって特別な人なんですね。」

「それにしても井口先生、
B.C.　Building　Inc.に口利きできるなんてすごいですね。」

思わず私も口をはさんだ。

「あぁ、それは俺もびっくり。
先輩の友達がB.C.　Building　Inc.の社長の息子さんなんだって。」

「ハイスペックな方にはハイスペックなお友達ですね。」

「あぁ、だから健もまみちゃんも面倒かもしれないけど、
井口先生のところにコーヒー持っていくの頼むな。
先生からはお代はちゃんといただいていて、
それは君たちのバイト代の一部でもあるんだから。」

と、後半はちょっと言いくるめられるような形で事情を説明してくれた。

「健くん、私たちは下っ端だから仕方ないね。」

「そうっすね。まぁ、いいですけど。」

私たちのやり取りを見て、
バックヤードで葵さんと涼太さんは笑っていた。