秘密の告白~おにいちゃん、あのね~
*Episode 5* よろしく、さようなら
 会わない時間と、苦しいけれど会う時間は、どちらが辛いのだろうか。
比べようがないけれど、僕の決意よりも、彼女の行動のほうが一枚上手だったのかもしれない。

僕と遥姫の覚悟の差のようにも感じられた。

 道すがら義之さんに連絡を入れ、家に着くなり遥姫はたくさんの人たちに囲まれ抱きしめられていた。

 そんな姿を見て、僕はひとり家路についた。
帰宅したのはもうすぐ日付が超えそうなほど夜が更けていて、急いで風呂に入りそのまま爆睡した。

翌朝、これまた疲れきった母がなにか言いたげだったけれど、僕もなんとなく口に出せず、そのままいつも通り大学へ行き授業を受けた。

今日も授業が終わったら、履歴書を準備して、企業研究をして、帰宅したらお祈りメールが届いている。そんなちっぽけな僕が、すぐに何か変わるわけがない。
だって、僕はそれしかしていないんだから。

遥姫みたいに、変わる努力をしたのだろうか。

母のように強くなれず、ただ現実に打ちのめされているだけで、自分が自分でわからなくなっていく。

 僕は何一つできない。

そんな自虐思考に陥っていた時だ、携帯が震えた。

「もしもし……」

 電話の相手は、義之さんだった。

『突然悪いね、昨日のお礼を改めてしたいと思って』

 そんな必要はない。僕が勝手にしたことだし、僕も遥姫に会えて、苦しい気持ちもあったけれど嬉しかったのも事実だったから。

「あの、本当にいいんです。僕も久しぶりに皆さんともお会いできて嬉しかったし……」

『いやいや、娘を見つけてもらったんだ。食事でも一緒させてくれないだろうか?』

 こういう時どうやって断ったらいいものか。

僕は遥姫と二度と会わないつもりで離れたのに、これじゃあいつまでたっても距離がとれない。

「あ、あの、お恥ずかしいことにまだ就活中でして……昨日もたまたま家にいたから遥姫を探すことができただけなんです」

 僕が恥をさらすと、電話の向こうでもしばらく沈黙が続く。

そうだよな、娘が慕っている相手がこんなに情けないなんて恥ずかしいよな。

そんな風に考え始めたときだった。

「じゃあ、なおさら。僕と二人で会えないだろうか?」

 僕はその真意を読み取ることはできず、押し切られる形で承諾せざるを得なかった。
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