秘密の告白~おにいちゃん、あのね~
「遥姫」

 僕の声に、その子はバッと顔を上げ瞳を大きく揺らす。

「何してんの、こんなとこで」

 責めるというよりは、本当に純粋な気持ちで問う僕に、行き交うヘッドライトに照らされた彼女は目を伏せる。

「お、おにいちゃんには関係ないもん」

 口をとがらせて、初めて反抗的な彼女の態度に今度は僕が驚かされる。

「関係ないって……みんな心配するだろう?」

「お父さんに言われてきたんでしょ?頼んでないもん」

 なんだろうか、この不思議な気持ちは。
今まで気持ちをぐっと溜め込んでいたのに。
僕の言うことに対して従順だったのに。

率直な彼女の気持ちなのだろうか。だとしたら、それはとても驚くほど嬉しいことで、僕は笑い声を押し殺すのに必死だった。

「僕は、義之さんに頼まれてきたんじゃないよ」

 チラリとつり目がちの大きな瞳だけが僕を捉える。

この一年でなにがあったのか、どうしてこんなことをしたのか、僕は聞きたいことがたくさんあったのだけど。

「僕自身が遥姫を探そうと思ったから来た」

 一歩近づき、あの柔らかいくせ毛を撫でる。

遥姫は恥ずかしそうに俯きそっぽ向いたまま、壁に寄り掛かっていた体をようやく離し、背筋を伸ばす。

「おにいちゃんは、ずるい」

 ぽつりと零したので、僕はもう我慢できずに笑ってしまった。

顔を真っ赤にさせて遥姫は睨んできたけど、すべてが新鮮で、変わらず愛おしい。

「帰ろう、遥姫」

 手を差し伸べると、見慣れたあのもじもじする仕草の後ゆっくり僕の手を握る。

踵を返して駅に戻ろうと手を引いて少し歩き進めたときだった。

「おにいちゃん、あのね……」

 消え入りそうな声に、僕は足を止めゆっくり振り返る。

「ずっと……会いたかったよ……」

 外が暗くて顔はよく見えなかったけれど、時折ヘッドライトが瞬間的に照らす彼女の頬はりんご飴のように真っ赤だった。

「……うん、僕もだよ」

 握っていた手にぎゅっと力を込めた。
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