キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「きっと碧音君は、どんなステージでも全力なんだろうなぁ格好良いなって」
「……俺は、そうするしかないから」
ほんの少し悲哀が声に混ざった気がした。
「自分の言葉で伝えるのが、苦手だから」
碧音君が自ら本音を垣間見せてくれるのは、初めてかもしれない。
「その代わりに歌で伝えるんだ」
碧音君が仲間とステージでライトを浴びる理由の、ひとつ。
「今回は歌わないけど、ギターの音で。白石先輩の気持ちも一緒に観てる人に伝えたい」
碧音君にとっては、とても『大切なもの』なんだ。
「伝わるよ。絶対に」
「そうなれたらいい」
目を合わせてどちらからともなく笑う。
碧音君の世界に、柔らかい心の部分に、触れることができた。
そんな気がした。