幾久しく、君を想って。
親バカな思い
玄関に入ると、母は先ず松永さんにお礼を言った。


「真梨の母親です。先日は孫がお世話になりまして、ありがとうございました」


林田さんと来た時、一緒に遊んでくれたことを指しているのだろう。
彼はそれを聞いて恐縮がり、「こちらこそ、いつもお世話になっています」と頭を下げた。



「どうぞお上りください」


母はフッと微笑み、来客用のスリッパを玄関マットの上に置き立ち上った。


「真梨は拓海ちゃんと二人でお風呂に入ってきなさい」


顔を指差し、メイクが崩れていることを教える。
ハッと泣いていたことを思い出して、慌てて両手で鼻から下を覆った。


「ええ〜っ、おじいちゃんと二人で入りたい〜!」


拓海は、実家ではいつも父と一緒にお風呂に入る。
アパートではお風呂が狭いからと嫌がり、滅多に私とは入ってくれない。


「おじいちゃんはお客さんの接待があるから駄目よ。お母さんと入ってきなさい!」


キッパリと言い退けられるとぐうの音も出ないらしい。
「ちぇっ」と悪態を吐いて、「お母さん…」と助けを求める様な声をかけてきた。


「一緒に入りましょ。今日はちゃんと髪を洗えるようになったか確認してあげる」


松永さんの前で、息子と二人きりの入浴を話すのもどうかと思うけれど、拓海にはまだ親の手が必要で、完全に何もかもが自立をしている訳ではない。



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