幾久しく、君を想って。
「今日の服装、お似合いです」


ドクッと胸が疼いて見上げる。
仕事の時とは違い、髪の毛をワックスで整えている人が微笑む。


「女らしくて素敵です。仕事場で見かける宮野さんとは別人のようです」



「あ…ありがとう……ございます…」


声が震えだしそうでいけない。

ドキンドキンを大きく胸が弾み出すのを意識したまま、彼の服装に目を向けた。


黒い革ジャンパーの下には、水色とグレーの糸で編み込まれたニットを着ている。

品のいい色合いで、優しい彼の雰囲気にも似合っている。

ビターチョコカラーのズボンとの相性も良くて、大人らしい感じに纏められている。



「松永さんの服装も素敵ですよ」


思わず本気で褒めた。

彼は照れた様に笑みを浮かべ、お礼も言わずに背中を向ける。



「取り敢えず、行きましょう」


後ろ向きのまま言うところを見れば、もしかしたら恥ずかしがっているのかも…とも思う。

はい…と応じて歩き、彼の歩調に合わせて行こうとしたら…。


スッ…と手が後ろに伸びてきたので、思わずそれを見つめ返した。

意味するところが分からず、じっと見てしまった。


振り向いた人が口角を上げる。

黒い瞳と目がぶつかり合い、こんなイケメンだったっけ…と思いだした。



程よい太さの眉毛は真っ直ぐに整えられ、眉間の辺りから既に高いと思われる鼻梁は形もいい。

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