幾久しく、君を想って。
上唇の肉が少し厚くて、下唇が少しだけ薄く見える。


二重瞼だったんだ…と、この時初めて気づいた。

睫毛は多くないけど、長さがあるから丁度いい感じがする。



つい物も言わず見惚れてしまった。
彼の唇が動き出すのを見て、ハッと我に戻った。



「手、繋ぎませんか」


そう言われて、「は…?」と声を出した。
掌を見せられ、「繋ぎましょう」と誘われる。


突然のことに狼狽えていたのかどうかは分からないけれど、何も考えないうちに手を差し伸べていた。


大きくて肉の厚そうな手が近づき、支えるように掌を包み込む。

甲の上に乗った親指の爪を見つめながら、急に汗が噴き出してくるのを感じた。


こんなふうに手を取られたのはずっと前が最後だった。

あの時は拓海が生まれたばかりで、これからもずっと、この手を離されずに生きていくんだろうな…と思った。


けれど現実は違い、既に離されて遠い過去だーー。



それを思ったら堪らなくなった。

握られた手を引き抜きたくなって、でも、それをすれば松永さんに嫌な思いをさせるだろうな…と思い我慢した。


きゅっと握られたまま、彼の歩調に合わせ続ける。

胸の中は複雑過ぎて、嬉しいんだけど悲しい気持ちがしている。

現在と過去とが入り混じって、なんとも言えない混沌とした気分になった。


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