3センチHERO

「なあ、お前いつもああなの?」


二階の自室に着いた瞬間、胸ポケットからひょっこり顔を出した三枝くんは、私のほうを向いてそう尋ねた。


「ああ、って?」


「本当は友だちがいないってこと、家族に言ってないわけ?」


三枝くんの一言で、きゅっと胸がきつく苦しくなる。


そんなに親しくなかったはずの彼にも、もう見抜かれてしまった。


「言えるわけないじゃん…絶対悲しむから」


「ふーん」


優しくて、いつも笑顔なお母さん。


そんな彼女の表情が、暗く染まってしまったらと思うと、また胸が絞まる。

< 19 / 345 >

この作品をシェア

pagetop