溺愛妖狐ひろいました


先輩はずるい。
きっと、なにも知らない昔の私ならそんな事言われたらきっと自惚れてた。
自惚れて、ああ、先輩も私の事・・・なんて馬鹿な妄想をしたんだろう。


そんな風に言われて、嬉しいって思わないはずないのに。
でも先輩が言う幸せになってほしいっていうのは、先輩とじゃなくて他の誰かとってこと。
そんな事を知っている今の私には、切ない思いしか抱けない。



健気で可愛い。
その褒め言葉ですら、ちくりと胸に刺さるのだから。




吹っ切らせてほしい。
ちゃんと。


先輩には彼女がいて。
もうすぐ奥さんになる彼女がいて。

それを知ってるくせに。




私はいつまで、縋りつこうとしてるんだろう。
そんなつもりないのに。
ふっきったつもりでいるのに。



心の奥は、結局先輩を見てるんだろう。





「余計な、心配ですよ」





ほんと、狡い。



< 177 / 380 >

この作品をシェア

pagetop