溺愛妖狐ひろいました
おれは、巴をこの手で殺した。
神殺しの罪を背負った俺は、逃げるようにその村を後にした。
巴のために。
おれは誰よりも大切な巴を。
なにもかもどうでもよかった。
でも、一つだけ心に重く鉛のようにのしかかるもの。
それは、人間への恨み。
全て、人間のせいだ。
時の流れで移ろうことは仕方ない。
白銀も、巴もそう言っていたけれど。
自分たちの必要な時には頼って願いを叶えてもらっていたのに、必要なくなるとあっさりと忘れ去って恩もなかったかのように振る舞う人間に対する恨み。
全て、人間のせいだ。
おれの心は、復讐に染まった。
もう、神使の肩書もなくなった。
ただの野狐。
違う、神殺しの野狐になった。
もう、怖いものなんて何もない。
おれは、村に戻り村を襲った。
多くの人間を殺し、村を壊滅に追いやった。
それからは、姿を消し死んだようにただ生きていた。
でも、最近になってその件で追手がおれを見つけ出し追われるようになった。
おれは必死に逃げ、命からがら逃れたところを、そう、亜子に拾われたんだ。
それが、おれの罪の話。