ビルの恋
「朝食、まだですよね?」

本条君は、搭乗手続きを済ませて戻ってくると聞いた。

「何か食べます?7時半の便なので、あまりゆっくりできませんけど」

と言うので、じゃあそこで、とそばにあったカフェを指さす。

6時45分。

こんな時間にここで本条君と一緒にいるとは、いまだに信じられない。

「夏堀さん、大人しいですね」

「そう?」

「B.C.Square Tokyoにいる時はもっと活発じゃないですか」

「そうかな。
ごめんね、せっかく誘ってくれたのに」

「いえ。僕こそ強引にすみません」

黙ってサンドイッチをかじり、コーヒーを飲む。
じんわりと体に暖かさが広がる。

私は伊坂君のことで落ち込んでいる。

でも今日は、本条君と向き合ってみなくては。

「・・・最近あまり眠れてなかったんだけど」

「はい」
私が何か話すと、本条君は律儀に返事をする。

「飛行機の中なら眠れるかも・・・それで、眠って起きたらすっきりすると思う」

私は宣言した。

今日は切り替えるのだ、気持ちを。




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