アンダルテ ~王女と騎士の物語~

初めての夜会




モルゼ城の大広間は他国に比べてこじんまりとしていたが、床、窓、天井その細部に至るまで散りばめられた職人の意匠技術が有名である。
一説によると、天使モルゼが一番に愛した職人が年に一度、モルゼの生誕を祝い一つずつ贈ったのだとされている。中でもシャンデリアは、その絢爛さと大きさに誰もが驚くほど。
数多の客人を魅了してきたというそれは、今宵も賑やかな大広間を明るく照らしていた。




華やかな音楽と美味しそうな匂いを漂わせる料理たち。
美しいドレスに身を包んだ貴婦人や煌びやかな正装の男性たち。
穏やかな高齢の夫婦からアデルと同じような若者まで、多種多様な客人が参加していた。
ウィルとエルガーべ一行の到着を歓迎する夜会である。



アデルにとっては人生で初めての夜会であり、城外の人間に姫として会うのは初めてのことである。実際は半月後に開かれる舞踏会にて、正式にモルゼ王国第二王女としてのお披露目があるのだが、先んじてこの歓迎会が行われたため今夜が初なのである。




「アデル、そんなに怯えなくてもいいのよ。」



他国の王族や貴族を招いて行う会は、結婚式や舞踏会があるため、今回の夜会では国内の貴族だけが招待されている。
しかし、今まで顔を合わせられる人が限られていたアデルにとっては、挨拶へ来た貴族へ愛想笑いを向けるのがやっとであった。


国内の貴族は流石に覚えておいて欲しいと言われ、ノートンと一緒に必死に名前を覚えていたのだが、途中から顔と名前を一致させることを諦めてしまった。


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