優しい彼
「なんで?
おまえにいつも優しいんだろ」
「優しいよ?優しいけどさ。
一度も怒ったこと、ないんだもん」
グラスに残っていたお酒をぐいっと飲み干す。
結構、酔ってきてると思う。
いつもならこんなに飲まない。
けど、今日はなんか、宜哉への不満が最高になってたというか。
「私がちょっと言い過ぎたりしたら、ふつー、怒るよね?」
「なに、怒んないの?」
「全然ー。
いっつも困ったみたいに笑って、『ごめん』っていわれるの」
「あれじゃね?
やっぱバツイチに負い目があるとか」