イジワルな彼とネガティブ彼女
「足立くん、ちょっと」


こっそり足立くんを呼んで、


「悪いけど、本田さんの案内お願い」


「えっ?」


逃げるように、女子トイレへ入った。


足立くん、あきれてるだろうな。


個室に入ったものの、特に用はなく、これからのことをぼんやり考えた。


とりあえず、展示会の代休を月曜と木曜でとろう。



「本田さん、ご案内します」


「莉子は?」


「席外してます」


「じゃあ、俺待ってるからさ、莉子に伝えて」


「お待たせするのも申し訳ないので、男子トイレと休憩室のご案内だけしましょうか」


「悪いな、気をつかわせて」


「いえ」


「なあ、なんで莉子は俺のこと避けてるわけ?」


「私にはわかりません」


「ライバルには教えるわけねーか」


「はい」


「認めるんだな」


「はい」


楓さんと足立くんの間でそんな会話が続いてるとは思わず、席に戻った。



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