待ち人来たらずは恋のきざし
何だか、咽が痛くて、身体が痛くて目が覚めた。
…何時?…夜?
はぁ、…インフルエンザじゃなければいいけど。
課長は直ぐ回復した感じだったから、インフルエンザでは無いのかな。
…解らないけど。
いつもの私の風邪のパターンではある。
課長と違って私は薬を常備している。
起きて飲もう。
…あ、れ?
パジャマ着てる?
私、確か何も着てなかったはずなのに。
ヨロヨロとリビングに歩いて行くと男が居た。
「起きたのか?大丈夫か?
あー、薬か…これ?」
「あ、…はい」
棚の上の救急箱を男が取ってくれた。
水は冷たくない方がいいよな、と言って常温の水を渡してくれた。
「…有難う。あのね、私、貴方を直ぐに追い掛けたかったの。
あ、これは都合のいい嘘じゃないのよ?本当よ?信じて?
あのまま、帰ってしまうのをそのままになんてしたら駄目だって。
でも、身体が何だか辛くなって…ごめんなさい、いい訳よね。
これは貴方が着せてくれたのよね」
「いいから早く薬を飲め」
「…うん」
まだ怒ってる…。
中々飲もうとしないから薬を取り上げられた。
「何錠?」
「え?あ、2錠…」
男が水を口に含んだ。
薬を入れると口移しで飲まされた。
「…移せよ。移したら治るだろ?」
ゴクッという音と共に薬を飲み込んだ。
「景衣…」
男は続けて唇を重ねる。
「…ん、ぁ、本当に移っちゃうから、…駄目よ、こんなのは…」
「移せって言ってるだろ」
激しく食む。…深く、止まらない。
「…身体の痛みも、熱も、…全部俺が貰うから」
「…うん、創一朗の好きにして」
「…はぁ、景衣…。
今日中に治すぞ。
日曜には荷物、取り敢えず身の回りの必要な物だけマンションに持って行こう。
…身一つあればいいんだけどな」
「はい。…私、聞きたい事があるの」
「いや、今は話さない。
また、朝の二の舞になる。
知りたい事は後からだ」
「はい…、解りました」
「俺も聞きたい事があるんだ。
これは、今、聞く」
「な、に?」
「…いや、止めた。
景衣の身体に聞くからいい」
「え?」
景衣の首筋にあったほんの小さな紅い跡は何とも言い難い程のモノ。
上書きすれば済む事だ。
「景衣、今度マスターのところに行こう」
「あ、そうですね」
二人で来てって言ってた。
「知ってたか?」
「何を?」
「初めて会った日、景衣がお参りしていた神社、あの神社の神主らしいぞ、あのマスター。
俺も知らなかった」
「えー、そうなの?」
「神様もだけど、神主も、流石に夜は居ないって事だな」