秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
コルネリアは、父に自分がルッツを街に案内すると伝え、小型の幌付きの馬車を用意してもらう。
その間にコルネリアは、パーティ用のドレスから、普段使いの袖が手首まであるドレスに着替えた。開いている首元には大判のケープをはおった。
街の入り口で馬車を降りる。
開放的な港の人の服装と比べると、コルネリアの格好はずいぶんと上品だ。
「あれっ、コルネリア様だ」
市場がざわつき、人目が集まる。コルネリアは「こんにちは」と会釈すると、目を伏せてルッツに先を急がせた。
「すみません。私、普段あまり市場に出ないものですから。たまに来ると珍しがられるんです」
「そうなんですか? 領主様のご令嬢ですから、やはり一目置かれてるんですね」
向けられる視線は、どちらかと言えば羨望というよりは奇異のものを見る目だ。
自分の領地に染まれない領主の娘を、町の人たちがどう見ているのかは知っている。
「……一目、というのとは違いますわ。弟や妹だったら、こんな事ありませんの。昔から町の人になじんでいて、愛されていて……。私もここで生まれたはずなのに、なぜかうまくなじむことができなくて」
それは母が違うせいだと思っていた。だけど、それだけじゃないだろう。コルネリア自身の努力も足りなかったのだ。
ギュンターと出会って、人の印象を決定づけるものが爵位だけではないと知った。彼には爵位以上の魅力がある。だが自分はどうだろう。