秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「こんにちは、コルネリア」
にっこり笑うギュンターの顔に、ゆっくりと手を伸ばす。
「……本物ですか?」
「ええ。触って確かめてごらんなさい」
コルネリアの伸ばした右手を掴むと、自分の頬に押し当てた。じっとりと汗をかいているのは、ここまで馬を飛ばしてきたからだろう。
コルネリアは、賑やかな市場のざわめきが消えたような気がした。まるで、世界にいるのは自分とギュンターだけのようだ。
「どうして」
「……会いたくて。あなたは控えめすぎて、時折幻なのではないかと思ってしまいます。それに、あなたの生まれた街を見たかったのです」
「え?」
「ベレ領に来るのは初めてなのですよ。どんなところで、どんな風に過ごしてきたのかが見たくなってきました」
「まあ。……ではご案内しますわ。でも、あまり街には詳しくないのですけど」
それから、ギュンターとコルネリアは街を見て回った。
野菜や魚といった生鮮食品の店は、売り切るために値切りの声を張り上げる。
ギュンターはそれが珍しいのか、時折店の人間に話しかけに行った。
「活気にあふれたところですね」
「ええ。商人が多いですから」
「あなたのイメージとはちょっと違いますが、これはこれで面白い」
ギュンターは機嫌よく口元を緩めている。端正な顔に柔らかみが加わり、通りを歩く人は必ず彼を振り返っていった。
嬉しい反面、やっぱり自分が彼の隣にいてもいいのかなどと考え込んでしまう。