秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「大丈夫。私たち、体格は似ているもの。私のドレスを着ていれば、きっとばれないわ。その間に私はヴィリーと……」
夢見るような目つきで、エリーゼは両手を組む。
コルネリアは華やかなドレスを体に当て、ため息をこぼす。
体格が似ているわけではない。背丈が同じだけだ。胸周りはエリーゼのほうが豊満で、彼女のドレスはコルネリアには若干緩い。果たして胸の詰め物は準備されているのかいささか不安に感じる。
「ねぇ。やっぱり、やめない? 今日の会にはギュンター様もいらっしゃるとの噂よ? バルテル公爵さまは、あなたとギュンター様の縁談を望んでいるんでしょう?」
「そんなこと言ったら、ベレ伯爵さまだってそうでしょう? 王家に次いで今勢力を持っているのはベルンシュタイン伯爵家よ。誰だって彼を狙ってる。だから、私じゃなくても問題ないはずだわ」
「それは、そうでしょうけど」
けれど、光り輝くような美貌を持ったエリーゼと他の令嬢たちを比べれば、ギュンター様だってエリーゼがいいと思うだろうとコルネリアは思う。
まして家柄的には申し分ないのだ。ベルンシュタイン家の立場に立ったとしても、王家筋と血縁関係を持てればそれに越したことはないだろう。
しかし、そんな理屈を目の前の公爵令嬢に言ったところで耳に入らないのもわかっていた。
コルネリアは別の視点からの説得を試みる。