秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~


「その……ヴィリー様という方は、本当に信用に足る方なの?」

「当り前じゃない。いずれは騎士団長にと言われているお方よ。本当はあの方が騎士団長になるのを待って、お父様に掛け合えればいいのだけれど、今のままでは先にお嫁に行かされてしまうものね」


白い頬をピンク色に染め、夢見るようにエリーゼは言う。


エリーゼはいま、恋をしているのだ。

お相手は、王家に使える騎士団の団員であるヴィリー=アッカーマンである。

現在、戦争もなく平和が続いているドルテア国では、騎士団は夜会の警護に駆り出されることが多い。
王家主催の晩餐会に出席したエリーゼは、人気の多さに辟易して庭園を散歩していた時に彼と出会った。

一目で恋に落ちたというエリーゼは、夜会に出席するたびに彼との逢瀬を重ねるようになる。身分差などそっちのけで、すっかり彼のとりこだ。もちろん、それを父公爵に言うことなどできるはずがない。

そこへもって、現在バルテル公はエリーゼの縁談相手にと、かのベルンシュタイン家のギュンターに縁談を持ち掛けているらしい。家柄をもってすれば、エリーゼが選ばれるのは必然。公爵はもうすっかり縁談をまとめた気でいるだろう。戸惑うエリーゼの訴えなど、夏によってつく蚊のような扱いしか受けていない。

思いつめたエリーゼは、駆け落ちを企てることにした。

タイミングよく、エリーゼにとっては従兄にあたるクラウス=ファーレンハイトから仮面舞踏会への誘いをいただいた。これならば顔がばれることはないし、コルネリアと衣装を交換していたことも言い訳ができる。
< 15 / 147 >

この作品をシェア

pagetop