秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~


 馬車はしばらく平原を走っていたが、バルテル公爵家の領地境では、建設工事が行われていて、通りが狭くなっていた。


「これは何を作っているの?」

「お父様は物見台を作るのだと言っていたわ」


中央領は大部分が平野であり、一番広い中央から北にかけてを管理地としているのが王家ファーレンハイト家。さらに三つに分けられた地区は王家の分家筋が管理している。

領地境は主に、川や森であり、バルテル公爵家はこの森を抜けたところまでが管理地だ。建設中の櫓は森の手前にあり、コルネリアには一体何を見物するつもりなのかと不思議でならない。

それをエリーゼに言うと、「鳥じゃないかしら。この森には多くの鳥が住んでいるのよ」などどのんきなことを返された。


「鳥……ねぇ」


その割には土台は石組みのしっかりしたものだ。
通常、建物は木造であることが多い。木は加工がしやすく、建設期間を短縮できるからだ。
石切りの技術はだいぶ発達したもののやはり時間がかかるし、金額もかさむ。

そんなお遊びもののためにわざわざ作るだろうか。いやでも、このエリーゼの親であるし、なんといっても公爵家だ。
お金は湯水のように沸いてくるのかもしれない。


「そうね、きっと」


コルネリアは納得し、再び外の景色を眺めた。
街道沿いに広がる畑では、花が咲いていて、農家で飼っているのか猫が蝶々を追っていくのが見える。

春は恋の季節だ。エリーゼがのぼせたようになっているのも仕方のないことなのかもしれない。



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