秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「エリーゼ。宝石を持っていくといいわ。ドレスの隠しに入るだけ入れてお行きなさいな」
「あ、そうね。彼の前では美しく飾らなきゃいけないものね」
「そうじゃないわ。もし困ったら換金できるように、よ」
今後貧乏暮らしになるかもしれないということを、エリーゼは本当にわかっているのだろうか。
ヴィリーとて、公爵令嬢を連れて逃げたとあれば職を追われることになるだろうに。
コルネリアは心配のあまりエリーゼをぎゅっと抱きしめる。
「心配だわ。もし、あなたたちが困ったらベレ領に逃れてきて。私、できる限りのことはするから」
「ありがとう、コルネリア。でも大丈夫よ。ヴィリー様はとても頼りがいのある方だもの」
世間知らずなエリーゼに笑いかけ、コルネリアは豪華に着飾られた見慣れない自分の姿を鏡でみやった。
いつもより美しく着飾ってもらっているというのに、気分は全く晴れない。
顔を隠せる仮面舞踏会であるということだけが唯一の救いだった。