秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
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ギュンターが一通り指示を出し終えて応接間に戻ると、バルテル公が待っていたとばかりに近づいてきた。
「ギュンター殿、どのあたりを捜索されているのかね」
「もともとの騎士団が想定した捜索範囲内を少し伸ばしました。公爵様ゆかりのお宅も回らせていただいています。もしも身代金目当ての誘拐であった場合、公爵家に脅迫状が行くものかと思いましたので」
「おお、そうか。しかしそうであればすぐに私のところに早馬が来るはずだ」
「公爵が本日ここに来られていることは知られているのですか? 皆様は王宮にいると思っているのでは?」
「こちらに向かうという伝令は出してきている。それより、私はやはりコルネリアが怪しいと思う。一番エリーゼの近くにいるし、あの子の性格も知っているだろう。罠にはめるのなど簡単だ。私はね、べレ伯爵ゆかりの建物を捜索するべきだと思うよ。べレ家は王宮に部屋を与えられていないからね、仮住まいの屋敷を城下町に持っていたはずだ」
「そうですね。そこも一応候補には入れていますよ」
「さすがはギュンター殿。分かっているな」
公爵は満足げにうなずき、ギュンターの肩を親しげに抱く。
「ベルンシュタイン領は山風が冷たいと聞いているが、やはりドレスの生地は厚いものがいいのだろうか。エリーゼは寒がりでね……」
気の早い公爵は、エリーゼの嫁入り後の心配まではじめている。ギュンターはあきれつつ、顔には出さないように、努めて笑顔を作った。そして、公爵をなだめるように言った。
「まあ、使いの者たちが戻るのを待ちましょう。先のことはそれからです」