秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~


「……コルネリア」


ギュンターはぎゅっとこぶしを握り締めると廊下に走り出た。


「そこの君、ちょっといいかな」

「はい。どうかなさいましたか?」


手近の侍女を捕まえて、公爵が出入りしていた部屋を尋ねる。そこを順々に探してみるも、コルネリアの姿はない。

コルネリアは絶対にエリーゼ誘拐にはかかわっていない。
ギュンターがほぼ正しいだろうと確信している犯人は公爵その人なのだ。

虚偽の疑惑を潔白の人間に認めさせるには、脅すのが手っ取り早い。
人が冷静さを失うのは恐怖にかられたときだ。

そこまで考えて、血の気が引いていくのを感じる。


「いくらなんでも、やっていいことと悪いことがあるぞ」


ギュンターは踵を返し、屋敷の裏側にある厩のほうへと向かった。
ごった返す馬車の群れ、さらにその奥の厩舎のあたりを見回す。

ここもまだ人がいる。
もっと奥だ。ひとけがなくて、暗い所。女性が恐怖を感じるのはそんなところだろう。密室であれば尚更だ。

少しして、庭師などが道具を入れている小屋がある。
小窓がついていて、そこにランプのものかと思われる小さな明かりが揺らめいていた。


「やっ、……やめてください」


耳を澄ましていると、女性の悲鳴が聞こえ、ギュンターの背筋がすっと冷えた。

今日は舞踏会だったため帯剣はしていない。仕方なく、周りを見回し、頑丈そうな枝を一本拾い上げて、小屋の傍に寄った。

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