その唇で甘いキスをして…
ジュンの家出

ジョウさんがハルさんを呼んで
ハルさんがお見舞いに来た。

アタシは寝ててハルさんが来たのを知らない。

「ジュンはカオルじゃなきゃダメなのかと思ってた。」

「ジュンが愛してるのはハルキさんですよ。」

「お前もちゃんとコイツに愛されてるぞ。」

「でも一番はハルキさんだ。

それは変わらないし変わっちゃいけない。

ジュンはカオルには昔から特別な感情があるけど…
それはアイツの境遇があまりにも過酷だからですよ。」

「お前のが過酷じゃねーか?」

「俺は若い頃から一度も金に困った事などありませんから。

それはハルキさんも同じでしょう?

アイツには家族も居ませんしね。」

「ジュンも同じように家庭というものをほとんど知らないで育ったからなぁ。」

「だから2人は兄妹みたいに繋がってるんです。

寂しい時はお互いを慰めあって
辛い時はかばい合って生きて来たんです。

でも血は繋がってませんからね。

男と女になれないワケじゃない。

お互いの相手が出来ると
家族に捨てられるような気がするんじゃないですかね?

多分ですけど…」

「だから引き離す訳にもいかない。

ったく、ややこしい関係だよなぁ。」

アタシは寝ていたから
ハルさんがその時話したことを知らない。

「ジュンをどうするんです?」

「元気になったら連れて帰るよ。

ホントはコイツが居なきゃオレがダメになりそうなんだ。

それまでよろしく頼むな。」

そんなことを言った事も知らないで
目を覚ますとジョウさんが居て
アタシは言った。

「カオルに逢いたい。」

ジョウさんはダメだと言ったけど
アタシはジョウさんが出かけてるあいだに
フラフラの脚でカオルの所に行った。



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