その唇で甘いキスをして…
カオルはハルさんが買ったビルの事務所に住んでる。

事務所の応接用のソファーがカオルのベッドだ。

「ジュン…何かあった?」

「ハルさんに捨てられちゃったみたい。」

アタシが泣きそうな声で言うとカオルはアタシを抱きしめた。

「ごめんな。俺のせいだろ?」

「そうじゃないよ。

アタシがダメだから愛想が尽きたんだよ。

ジョウは置いていけって…。

でも…それだけは無理なの。」

「ジョウの事は俺が何とかするよ。」

カオルはこんな時、本当に頼りになる。

カオルの所には来ないつもりだったのに…

またハルさんが誤解するかもしれない。

「カオル…それより少しだけ話しをしない?」

カオルはソファーに座るアタシの前に立って
アタシの顎をグイッと上に向かせる。

「話なんか後にしよう。」

「誤解しないで。そんなつもりで来たわけじゃない。」

「誤解?

誤解なんかしてない。

オレはハルキさんからジュンを奪うよ。」

そう言うとキスしようとする。

アタシはその唇を指で止めた。

それでもカオルがキスをしようとするから…

「そんなことするなら帰るよ。」

と席を立った。

カオルが腕を掴んで引き止める。

「それなら何しにここに来たんだよ。」

そうだよね。

ホントはアタシも何でかわからない。

ただその顔が見たかっただけ。

言葉には出来ないけど…

ただ逢いたくて堪らなかった。


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