その唇で甘いキスをして…
電話を切るとハルさんを睨んだ。

「酷いことするんだね。」

「でも…感じてた。」

アタシはハルさんから身体を離して
服を着ようとした。

「何してる?」

「帰るの!」

不機嫌になったアタシをハルさんは宥めるように
抱きしめる。

「悪かった。

カオルに電話して来いよ。

安心させてやれ。」

ハルさんはまるで不倫相手みたいに言った。

本当はアタシがしてる事が間違ってるのに…

アタシはベランダに出てカオルに折り返した。

「ごめん…ちょっと手が離せなくて…」

「どこ?」

「あー、コンビニに寄って帰るとこだったの。」

「そっか。遅いな?」

「少しだけお店で飲んで来た。」

「1人で?」

「うん、帰ってもカオル…居ないしね。」

嘘をつく度
胸が押しつぶされそうで泣きそうになる。

「そっか。明日帰るな。

ジュン…愛してるよ。」

「うん。」

カオルの愛してるよが…
捨てないでって聞こえる。

電話を切ると涙が出て止まらなくなった。

ハルさんがそんなアタシを見て
抱きしめる。

「寒いだろ?中に入ろう。」

「優しくしないで…。」

ハルさんに優しくされる資格も
カオルに愛される資格もアタシにはなかった。




< 110 / 131 >

この作品をシェア

pagetop