クールな御曹司にさらわれました
「怪我をしていないなら問題ない」

ゆるりと尊さんが身体を離した。私は妙な汗をかいてしまった額を拭った。先に立って丘を降りる尊さんの後ろを歩き出したけど、言葉が見つからない。

小山を降りて、駐車場に出ると尊さんの携帯に着信があった。しばし、会話していた後に尊さんが振り返る。

「すまんがタマ。急な仕事だ。これから、会社に戻らなければならない。おまえは別邸に送るから、もう少しゆっくり昼寝でもしておけ。御台寺を迎えにやらせる」

「え!?サラさんが!?」

「何か不満があるか」

いえ、そういうわけではないんですが……サラさんと尊さんが想い合っていた場合ですね、私、昨晩尊さんとひとつ屋根の下ふたりきりで夜を明かしちゃったわけで。いくら私が不本意だったとしても、サラさん的には面白くないのではないかと……。

「御台寺の休日を心配しているなら、不要だ。あいつはおまえの迎えなら喜んでくるぞ」

「そりゃ、サラさんは優しいですけど……」

「気付いていないのか?そうか、馬鹿だとは思っていたが」

なんか失礼なことを言われたぞ。尊さんが言った。

「御台寺はおまえがお気に入りなんだ。外国に嫁に出すくらいなら私が嫁にしたいってずっと言ってるぞ」

「え?はああ!?」

「あいつはどっちもイケるクチだ。タマのことは調べてる最中から可愛い可愛いとうるさかったが……俺としてはあいつとデキてしまうと困るな。マヒドの日本人妻にできなくなる」

ちょ……想像の斜め上の出来事に頭がついていかない。

尊さんは私を送り届け、さっさと仕事に向かってしまった。まったく何事もなかったかのように。




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