クールな御曹司にさらわれました
便利な逃走方法、GPSや盗聴器の疑いのあるものの除去、各都市の隠れ家になりうる場所……そういった指南を父から受けた私は、15時に羽前家を出た。
ひっそりと通用口を使って。加茂さんやお手伝いさんたちと遭遇しないよう、細心の注意を払って移動。
「少ないけど、持ってけ。足りない分は、近所のコンビニでさっさとおろせ。地方に行ったら、もうおろすな」
父が財布からざっと十万円程度の札を私の手に押し込む。
「お父さん……どうしちゃったの……こんなお金」
「あのね。お父さんも働いてんのよ?ここに軟禁状態だから、パチンコも競馬も行けなくて、もらった給料使えてないんだよ。おまえにも借金たくさんしてるし、少ないけどやるから持っていきなさい」
頼りになるんだか、ならないんだかのスタイルは相変わらず。でも私は父に感謝した。
「行ってきます」
「ああ、帰らなくても大丈夫だ。いつかまた会える」
「お父さん、まっとうに働いてね」
「おうよ、妙は妙の幸せを見つけにいけ」
幸せ。
その言葉でずきんと胸が痛んだ。
どんな理由があるにしても、ここで逃げ出せば尊さんの計画をめちゃくちゃにすることになる。彼を傷つけることになる。
その事実が後ろめたい。
だけど、止まれないのも事実。