クールな御曹司にさらわれました
次に目が覚めたのは物音だった。
目を開け、何時だろうと携帯を見る。薄暗い店内は時間の感覚がなくなる。時刻は24時だった。

トントン。物音がし、それからぼそぼそと話す声。それが何回も繰り返される。なんだろう。
近づいてきたノックが隣のスペースに。がちゃん、キイ。ドアが開く音が響く。

「失礼、人を探しています」

「……あんたたち警察の人?」

「いえ、友人を探しているだけです。失礼しました」

戦慄した。
まさかとは思うけれど……いや間違いないだろう。
探し人はおそらく私だ。

なぜ?どうしてもう追手がかかってるの?

混乱している私の個室のドアが叩かれる。私はびくりと震えた。
しかし、ここで妙な対応はできない。さっきから、何度かノックと人の話し声は聞こえてきたけれど、応じていない客もいるようだ。ホテル替わりに浸かっている人間は熟睡している場合も多い。追跡者は無理やり起こすような態度はとっていない様子。

私は咄嗟に毛布を首までかぶり、ドアに背を向けると狸寝入りを決め込んだ。もし、覗き込まれても顔を確認されないようにだ。
いかにも旅行中といった雰囲気のボストンバッグは、パソコンテーブルの下に押し込んで見えないようにした。
案の定、追跡者の男たちは二度ノックをしただけで、無理に起こさずに次のスペースに異動していった。
< 167 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop