クールな御曹司にさらわれました
足音とノックとやりとりの声が遠ざかる。

ほお、と知らずにため息が漏れていた。

次に私はむくりと起き上がった。部屋ナンバーの記載された伝票を持ち、靴を履く。
ボストンを手にそろりとドアを開けた。

このネットカフェはとにかく広い。追跡者は足音からふたりと推測。見咎められないように外に出るのは可能だ。外に見張りがいると嫌だから、例の上階に抜けられる出口を目指す。

12時間パックを使いきれなかったのはもったいないけれど、そんなこと言っていられない。二巡目の巡回が来る前に脱出しなければならないだろう。

前払いなので、伝票だけを無人の受付に置き、そろりとカフェを出る。すぐに出口ではなく階段に進路をとり、二階まであがった。

古い商業ビルの二階はすでに閉まっている飲食店ばかり。
昼間は会社員でにぎわいそうなところだ。窓からのぞくと繁華街は人もまばらだ。

黒いセダンが一台。そこから数人のスーツ姿の男が出入りしている。
まさか……いや、尊さんの手の連中かはわからないけれど、今は用心して避けるほうがいい。

父に聞いていた抜け道は、昇ってきた側とは真逆に位置した外付けの非常階段だ。降りて走って、JRを目指す。終電に間に合いたい。行けるところまで逃げなきゃ!
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