クールな御曹司にさらわれました
大通りで御台寺さんと別れ、オフィス街の裏路地に入ってすぐの小さくて古ぼけたビルの前にたどり着く。
ここが私の勤務先、ヤマダアソシエーション株式会社。
大手複合機メーカーの下請け扱いで、リース業をやっている中小企業ど真ん中な会社。社員数も、正規非正規合わせて六十人くらい。
私のいる営業部は一番大きい部署だけど、総数は三十人だ。
オフィスに入ると唯一の同期である小森拓郎が声をかけてきた。
「真中―、昨日そこの通りで黒塗りの高級車に拉致られたって噂が」
アームカバーをつけ、ネクタイすらしていない小森をちらりと見やる。
「噂じゃないでしょ。あんた見てたよね、小森」
「有体に言えば見てたね。で、見送った。大丈夫だった?」
ため息をつきそうになるが、彼に助けを期待するなんて鬼退治のおともにヒヨコを連れていくようなもんだ。期待は無駄、助けは無理。
無気力という言葉が誰よりも似合う同期・小森はへへーっと笑う。私は、ぐったりと肩を落とした。
「身体的には大丈夫だけど、精神的には大ダメージを食らってる」
「へー、昼休みに詳しく聞かせて」
小森は「男子社員事務員募集」に釣られて入社した男だ。
面倒くさがりで、大変な仕事はしたくない。営業は自分で向かないと知っているけれど、技術者になれそうな根気もないとのこと。基本、定時に上がれる内勤職は、彼にとって幸せな天職なのだ。
ここが私の勤務先、ヤマダアソシエーション株式会社。
大手複合機メーカーの下請け扱いで、リース業をやっている中小企業ど真ん中な会社。社員数も、正規非正規合わせて六十人くらい。
私のいる営業部は一番大きい部署だけど、総数は三十人だ。
オフィスに入ると唯一の同期である小森拓郎が声をかけてきた。
「真中―、昨日そこの通りで黒塗りの高級車に拉致られたって噂が」
アームカバーをつけ、ネクタイすらしていない小森をちらりと見やる。
「噂じゃないでしょ。あんた見てたよね、小森」
「有体に言えば見てたね。で、見送った。大丈夫だった?」
ため息をつきそうになるが、彼に助けを期待するなんて鬼退治のおともにヒヨコを連れていくようなもんだ。期待は無駄、助けは無理。
無気力という言葉が誰よりも似合う同期・小森はへへーっと笑う。私は、ぐったりと肩を落とした。
「身体的には大丈夫だけど、精神的には大ダメージを食らってる」
「へー、昼休みに詳しく聞かせて」
小森は「男子社員事務員募集」に釣られて入社した男だ。
面倒くさがりで、大変な仕事はしたくない。営業は自分で向かないと知っているけれど、技術者になれそうな根気もないとのこと。基本、定時に上がれる内勤職は、彼にとって幸せな天職なのだ。