クールな御曹司にさらわれました
……ホントね、そういうヤツだって知ってますけどね。
それにしたって、たったひとりの同期がさらわれる瞬間をぽけっと見ていたなんて、とんでもない。

「真中、スマホ震えてるよ」

デスクにつき、パソコンを起動させていると、横から小森が言う。
誰からだろう。ディスプレイの表示を見て驚く。

『羽前尊』

ひっ!!名前が表示されとりますがな!
ちょっと待って、なんで?なんで、こいつが私のメッセージアプリに登録されてんのよ。
いや、あいつなら有り得ない話じゃない。こっわ!こっわ!

『定時15分過ぎに、裏の駐車場に来い。』

メールの内容はこんな感じ。
はい、放課後呼び出し入りましたー。
逃げる?うん、無理だろーなー。

私がため息まじりに脱力してうつむくと、小森が言った。

「お疲れのところ、お気の毒だけど、車田課長の機嫌サイアクだから。気を付けて」

小森が言い終わらないうちに、こいつ聞いていたのでは?というタイミングで当の車田課長ががなった。

「真中妙!こっちへ来い!」

ハイキター、と小森が呟き、私はそれでも「はい!」と大声で返事をして、急ぎ立ち上がった。
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