クールな御曹司にさらわれました
素早く課長の元へ向かい、ぴしっと背筋を伸ばした。少しでも疳に触らないように。

「総務への提出レポートが集まってないのはなぜだ?」

車田課長は私に冷たい視線を投げる。四十代に半ばで、背が低くて頭がちょっと薄くなってきているこの人。
私はちょっとしたアクシデントから、ここ半年、車田課長に格別に睨まれている。

「すみません。すぐに集めます」

本当は出張や外出レポートはとりまとめの必要なんかない。営業が各自総務に提出するのだ。それを私がまとめると決めたのは車田課長。こんな風に、たいした意味がない割に手間のかかる仕事は日々増えていっている。

「怒られるのは僕なんだぞ?」

「すみません」

「足りない分をすぐに集めて今日中に出して来い!」

「あの、営業の半分は外出中ですので、今日中は」

「電話で聞いて、きみが書きなさい」

ええ?嘘でしょ。打ち合わせや電車移動中じゃ繋がらないし……!どうすんのよ!!
絶対、定時には終わらない……!

プライベートは借金取り御曹司、会社ではいびり倒してくる課長……真中妙、逃げ場がないであります!





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