クールな御曹司にさらわれました
2.教育されます



定時30分過ぎ、なんとか職場を飛び出した私はスマホにきた指令の場所へダッシュした。
裏手のコインパーキングには昨日の車とは違うけれど、あきらかにハイグレードな国産車が一台。

「遅い」

運転席側の窓が開き、そこには御曹司・羽前尊がいた。

「すみません。どうしても仕事が終わらず」

不機嫌極まりない車田課長に押し付けられた仕事は、小森も手伝ってくれなんとか終わらせることができた。30分の残業で済んだのは小森のおかげ。
……そんなこと言っても仕方ないから、言わないでおく。

「言い訳はいい。清算を済ませて早く助手席に乗れ」

「ははぁ」

お殿様相手のような反応をする私は、完全にこの男より自分を下に見ている。根っからの貧乏人根性がつらい。
人間の価値はお金じゃない。何億回と言われてであろう言葉も、お金に苦労して生きてきた私には綺麗なお題目に聞こえてしまう。

ん~、暗い思考はやめやめ。
亡くなったお母さんも言ってたじゃない。ぼろは着てても心は錦、って。
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