クールな御曹司にさらわれました
おどおどと青ざめているだろう私に尊さんが薄っすらと微笑む。
その笑顔の悪魔的に冷たいことったら!

「最初におまえを見たときから思っていたんだ。下手くそな着付けで現れるだろうと踏んだのに、きっちり綺麗に仕上げてきたからな。さあ、言ってみろ、誰の手を借りたんだ」

それは……言えない。尊さんのお母さんだもん。

「佐久子か?良枝か?……違うな。もしかして俺の母親か?」

即バレしてる……。
私が唇を引き結んでいるのを見て尊さんが呆れたようにため息をついた。

「あのお節介のお袋のことだ。どうせ、困ってうろうろしてるおまえを見つけて手出ししたんだろう」

その通りでございます。助けてもらいました。
私は心の中で答える。

「せっかく、テストのつもりで企画したのに、台無しだな。俺はおまえがダサく着崩れた着物で現れ、死にたくなるほど恥ずかしく思い反省の涙を流すのを狙っていたんだがな。お袋には厳重に抗議しなければならない」

「……お母様は何にも悪くないです……」

「俺の予定を崩すのは何人たりとも許せんな」

「そもそも、私が上手に着物が着られないって前提で食事に誘うなんて酷いじゃないですか!!私に恥をかかせるつもりだったなんて!!」
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