クールな御曹司にさらわれました
次に私の意識が浮かび上がったのは、妙な浮遊感を感じてだった。

ゆらゆらする。なんだろう。懐かしい感じ。

そっか、昔、お父さんに抱っこしてもらった時の感触だ。居間でテレビを見ながら眠ってしまった私をお布団まで運んでくれた時の感じとそっくり。

私は小さくて、まだお母さんも元気で、お父さんは相変わらず仕事をしていたりしていなかったりだったけれど、とにかく三人一緒にいられた。

懐かしいな。あの頃は、お金がないってことに苦しさを感じなかった。
それはきっとお母さんが私に負い目を感じさせないよう頑張ってくれていたってことなんだよね。
お母さん、会いたいな。

そして、お父さん、絶対に捕まえてとっちめてやるけれど、あなたが私とお母さんを愛してたのは本当。
それは知ってる。
だから、私はまだこんな思い出を心の中に大事に残してあるんだろうなぁ。

ん?
ちょっと、待って。ここまでふわふわ考察してましたけど、じゃあ今私は誰に運ばれてるの?
うっすら目を開けるとそこにはシャープな顎のラインと高い鼻梁が見えた。

「たけるさん……」

私を横抱きで運んでいるのは尊さんだ。衝撃を感じながらも。私はまだ強い眠気で身体が動かないでいる。

「今日はもう寝ろ。布団は用意してある」

付き合えって言われて、すっぽかしちゃったのかな。っていうか、ここはどこ?羽前邸……じゃないみたい。

「あの」

「いいから、寝ろ」

その言葉がやっぱり魔法みたいで、私はまたしても意識を失った。






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