冬の訪れ[短編]
「誰かと待ち合わせ?」

 何も知らないとはいえ、笑顔で恭子に微笑みかける。彼女の笑顔は悲しいほど可愛いかった。

 黒い瞳に黒い髪。くっきりとした二重のラインに透き通るような白い肌。それでいて唇は対照的に赤かった。

 彼女の名前は木村容子。恭子のクラスメイトだった。

 彼女の心はその外見にも劣らない。

「うん。でもすっぽかされちゃったみたい」

 恭子はいたずらっぽく言ってみた。

 心の中で彼にね、とつけくわえる。

 亮は恭子と目を合わせることさえもしない。

「それって酷い。誰? 私の知っている人?」

 容子は怒っているのか強い口調で恭子に問いかけた。彼女は本当に良い子なのだろう。

 亮の顔がわずかに強張る。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop