冬の訪れ[短編]
 ここで彼の名前を出したら二人の関係はどうなるのだろう。

 容子を見ていたらどうなるのかすぐに分かる。

 でも同時に彼女の心にぬぐえない傷を残すだろう。

 亮にならともかく

 何も知らない容子にあなたの後ろに立っている人だよとは言えるわけがなかった。

 何を知らない彼女を傷つけてしまうから。

 恭子は唇を軽く噛む。

 二人には気づかれないように。 

 それを分かっていて、彼は彼女との待ちあわせ場所の近くで、恭子と約束を交わしたのだろう。

 自分から別れの言葉を交わす手間を省くために。
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