赤に染まる指先
染まっていく
日が落ちたら、薄暗い灯りをつける。

くすんだオレンジ。

ぼんやりとしたその灯りを頼りに、机の上に置いていたマニキュアの小瓶を手に取る。

床に座り込んで、その細い取っ手をつまんでひねった。

キュキュ、と軽いひねくれた音をたてて開いた小瓶から立ち上るシンナーの臭いで頭までおかしくなりそう。

まるで、麻痺していくみたい。


少し欠けた指先の赤に、小瓶の赤を塗り重ねる。

塗り重ねたら元通りになるような気がした。

バカだな、欠けた事実はどうやったって変わらないのに。


マニキュアの色はいつも同じ。


赤。


だけどそれは、

りんごのように可愛い色じゃなくて、

ワインのように洒落た色じゃなくて、

沈む陽のようにやさしい色じゃない。


それは例えるなら、血の色。


縛り付けるような、赤い色。


あなたがくれた色。

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