赤に染まる指先
赤が好きだと、あなたは言った。

まるで血の色みたいな赤が好きだと。


だから新しいマニキュアを選ぶとき、その色にした。

キュートなピンクでも、クールなブルーでも、エレガントなバイオレットでもなくて、血の色みたいな赤を選んだ。

爪に重ねたその色を見て、あなたは似合ってると笑った。

私は嬉しかった。


なぜその色が好きなの、と聞いたら「生きてるって思えるから」なんて意味の分からないことを言われた。


だけど赤を塗り重ねた手をあなたと繋いだら、生きてるって心地がした。


馬鹿みたいって思った。

きっと私は馬鹿だった。


だけどそれでもいいと思えた。


馬鹿みたいって思いながらあなたのそばにいられたあの頃の私が、私も好きだから。

< 2 / 19 >

この作品をシェア

pagetop