赤に染まる指先
「なんで、好きになっちゃったんだろ」


掠れた声は少し涙色だった。


「ばーか」


吉田は笑った。



「後悔なんて、してないくせに」



私も笑った。


吉田の言うとおりだった。


そうだ、ほんとは後悔なんてしていない。


だってほんとは、大好きだから。


あなたのことが、大好きだから。


私は吉田と繋いだままの手を持ち上げると口許に寄せた。


不思議そうな顔をする吉田に構わず、私は自分の指に、赤に染まった指先にそっとキスをした。


…ねえ、やっぱり好きだよ。


大好きだよ。


あなたが別の誰かのことが好きでも。



「ねえ、吉田」


何が起こっているのか理解が追い付いていないらしい吉田に、私は笑いかけた。



「片恋同盟、つくろうよ」



悲しいときは慰めて、辛いときはとなりにいて。

寂しい心を誤魔化しあって、そうやって互いに大切なひとを想う。



「いいよ」



…ああ、きっと。

歪んでる、こんな関係。



だけど、それでも。


あなたを想い続けたいの。



それはあんたも同じでしょ?


ね、吉田。




fin.
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