ifの奇跡
「だけどお前は結婚してる身だし…連絡先も分かんないし。でも辛そうな顔見てたら何かしてあげたいって思った。今度こそ俺がって…。」

「冬吾……。」

「だけど、やっぱり俺じゃダメなんだな…。離婚までしててびっくりしたよ。」

「違う…。冬吾がダメなんじゃなくて……私が冬吾に甘えたら自分を許せなくなるから…。」

「なんて、そこまで思う必要があるの?」

「………それは、……」


黙ってしまった私に


「ごめん…困らせるつもりじゃなかったんだ。だけど、俺はもう過去の事は引きずってないから、お前にも気にしないでほしいって思ってる。」


過去を引きずっていないと言った彼の言葉に、傷付いている私は…本当に狡くて最低だと自分でも分かってる。

もうあれから何年も時間が経っているし、彼が前を見ているのは当たり前のことなのに…それを寂しいと思ってしまったなんて。

過去を引きずる私は、相当重たい女だ。

こんな狡くて酷い私を、冬吾だけには知られたくない。

言えない本音を、お酒と一緒にお腹の中に流し込んだ…。


「莉子…お前飲み過ぎ。もうやめとけ…。」


そんな彼の声が遠くから聞こえた気がした。
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