ifの奇跡
もう一度、スマホに手を伸ばし画面を表示させて時間を確認する。

真っ暗な部屋の中で見た無機質なスマホの光は思った以上に眩しくて、目を大きく開けられなかった。


6時04分


毎朝5時55分にアラームが鳴り、6時5分に布団から出る。

まだ隣の部屋で寝ているあの人を起こさないように、なるべく音を立てないように部屋から出て洗面所に向かう。

途中、キッチンに置いてあるガスストーブの電源を入れ、小さめの鍋に弱火でお湯を沸かす。

この時期はさすがに真水で顔を洗うのは辛くて、コックを捻ってからお湯が出るまでの間しばらく待つ。

少し湯気が出たのを確認するとコップにお湯を注ぎ、うがいをしてから歯磨きをした。

1本298円の洗顔料で顔を洗いオールインワンジェルを顔に塗り込んだ。

ジェルが肌に馴染んだところで、ファンデーションだけはずっと変わらずお気に入りのものを肌の上に乗せていく。

洗面所にある給湯スイッチの時刻表示を鏡越しに確認すると【6時18分】慌てて台所に向かった。

毎晩、就寝前にセットしている炊飯器には既にオレンジ色の保温ランプが点灯していた。

今日も予約通りにご飯が炊きあがっているようだ。

揚げと豆腐とワカメのお味噌汁を作り、昨日スーパーで特売だった鮭を焼き食卓に並べる。
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